can't の a はなぜ米英で違う?bath 系の単語が二つに割れる理由
can't はアメリカ英語で /kænt/、イギリス英語で /kɑːnt/。ここまでは知っている人も多いはずです。でもこれを「can't だけの例外」として丸暗記していませんか。
実は違います。can't は氷山の一角で、その裏には同じパターンで割れる単語のグループがまるごとあります。言語学ではこれを TRAP-BATH split と呼びます。trap(アメリカ式に典型的な /æ/)と bath(イギリス式に典型的な /ɑː/)から取った名前です。
同じグループが、二通りに読まれる
次の単語は、アメリカ英語では短く前寄りの /æ/(cat や bag と同じ母音)、イギリス英語(特に RP)では長く奥寄りの /ɑː/(car や father と同じ母音)になります。
- can't:米 /kænt/ ・ 英 /kɑːnt/
- dance:米 /dæns/ ・ 英 /dɑːns/
- bath:米 /bæθ/ ・ 英 /bɑːθ/
- class:米 /klæs/ ・ 英 /klɑːs/
- glass:米 /ɡlæs/ ・ 英 /ɡlɑːs/
- laugh:米 /læf/ ・ 英 /lɑːf/
- ask:米 /æsk/ ・ 英 /ɑːsk/
- after:米 /ˈæftər/ ・ 英 /ˈɑːftə/
- half:米 /hæf/ ・ 英 /hɑːf/
- answer:米 /ˈænsər/ ・ 英 /ˈɑːnsə/
10個の単語、規則は一つ。アクセントをアメリカ式からイギリス式に切り替えると、全部まとめて音が伸びます。1語ずつの例外ではなく、単語のグループがまるごと引っ越すイメージです。
綴りのルールに見えるが、実はそうではない
パターンに気づいた人もいるでしょう。これらの単語は a のあとに f・th・s のような無声摩擦音が来る(laugh、bath、class)か、n +別の子音が来る(can't、dance、after、answer)ことが多い。そこで「a のあとにこの組み合わせが来たら /ɑː/」というルールを作りたくなります。
でもこれは当てになりません。man、pan、hand、camp、fan——同じように a のあとに n や似た子音の並びが来ても、米英どちらも /æ/ のままで、割れることはありません。TRAP-BATH split は歴史的にこのグループだけが選ばれて固定されたもので、綴りのパターンに当てはまる単語すべてが対象ではなく、ルールだけでは導き出せません。単語ごとに覚えるしかない部分です。
「どちらが正しいか」より「混ぜないこと」が大事
どちらの発音も標準的で、優劣はありません。ネイティブの耳に引っかかるのは、アメリカ式かイギリス式かではなく、文の途中で切り替わることです。can't をアメリカ式の /æ/ で言った直後に bath がイギリス式の /ɑː/ で出てくると、二つのアクセントが継ぎ接ぎされたように聞こえます。どちらか一つの体系を選んで、このグループ全体を揃えること——それが「どちらが正しいか」より大事です。
ある単語がアメリカ式かイギリス式か、あるいは自分でも気づかず混ぜていないか——PHONO はカメラを向けるだけで英文を単語ごとに IPA 表示し、米英の発音を聞き比べられます。
ダウンロード:https://apps.apple.com/us/app/phono-english-phonetics-ipa/id6783243417 · phono.douhouse.com