button の t はどこへ消えた?イギリス英語の「声門閉鎖音」/ʔ/
アメリカ英語のフラップT——water が wader のように聞こえる現象——をすでに知っていると、イギリス英語を聞いたときにまた別の戸惑いに出会います。button をイギリス人が言うのを聞くと、t の音がまったく聞こえません。弾いた音でもなければ、d に近い音でもない。ただ真ん中でぷつっと途切れるだけです。
これはフラップTの仲間ではありません。まったく別の仕組み、声門閉鎖音、音標では /ʔ/ です。
舌ではなく、喉で作る音
これまで習った /t/ や /d/、/k/ は、どれも舌や唇が口の中のどこかで気流をせき止める音でした。声門閉鎖音は口をまったく使いません。声帯そのものが一瞬完全に閉じて気流を断ち切り、また開く——それだけです。実はこの音、日常でも自然に出しています。否定の「うーうー」(uh-uh) と言うときの、二つの音節の間にある小さな引っかかり、あれが声門閉鎖音です。
イギリス英語では、特定の位置で t がこの声門閉鎖音に置き換わります。
位置1:t の後ろに音節を作る n が続くとき
これは最も規則的で、主流のニュース放送でも普通に聞かれるパターンです。
- button /ˈbʌʔn̩/
- kitten /ˈkɪʔn̩/
- Britain /ˈbrɪʔn̩/
- curtain /ˈkɜːʔn̩/
- mountain /ˈmaʊʔn̩/
注意したいのは、これは「t がこもって聞こえにくい」のではないということです。舌が歯茎に触れる動作自体が存在せず、喉の閉鎖のあとに鼻音の n がそのまま音節を担っています。
位置2:語末の t の後ろに子音、または間が続くとき
- not now → /ˈnɒʔ naʊ/
- quite good → /ˈkwaɪʔ ɡʊd/
- what time → /ˈwɒʔ taɪm/
- that's it → /ˈðæʔs ɪt/
not を単独で言うときでさえ、はっきり開放される t ではなく、この喉の引っかかりで終わることがよくあります。
同じ文字なのに、まったく違う二つのやり方
綴りは同じ t でも、アメリカ英語とイギリス英語ではまるで逆のことをしています。アメリカ英語は舌先で軽く弾き、弱い d に近い音にします。イギリス英語は喉で断ち切り、子音らしい痕跡をほとんど残しません。フラップTを先に覚えた人がイギリス英語の声門閉鎖音を大量に聞くと、「t を飛ばしているのでは」と感じがちですが、飛ばしているのではなく、まったく別の場所で作っているだけです。
聞き取れるようになる価値
速いイギリス英語が「単語がぷつぷつ途切れる」ように聞こえる原因の多くは、話者が雑に発音しているのではなく、声門閉鎖音が規則どおりに働いているからです。このパターンが耳に入るようになると、button や Britain、not now が「聞き取れない音」から「予測できる音」に変わります。
自分でも発音すべきか
まずは聞き取れることが目標として十分です。イギリス英語らしい響きに寄せたいなら、button から試してみましょう。「うーうー」の喉の引っかかりを作り、その引っかかりをそのまま button の真ん中に入れて、舌をまったく動かさずに鼻音 n へつなげます。
t をフラップにすべきか声門閉鎖にすべきか、米英でどれくらい違って聞こえるか——PHONO はカメラを英文に向けるだけで単語ごとに IPA を表示し、米音・英音どちらも聞き比べられます。
ダウンロード:https://apps.apple.com/us/app/phono-english-phonetics-ipa/id6783243417 · phono.douhouse.com