knife は /naɪf/ なのに、複数形 knives はなぜ /v/ になるのか
knife の発音は /naɪf/ と覚えたはずです。語末は無声音の /f/、迷う要素はありません。ところが複数形になると綴りは knives。多くの人はそのまま /naɪf/ に /s/ をくっつけて読んでしまいます。
実際にネイティブがそう読むことはありません。knives の発音は /naɪvz/——ただ /s/ を足しただけではなく、語末の /f/ がまるごと有声音の /v/ に変わり、続く音も /s/ ではなく有声化した /z/ になります。
knife だけでなく、日常語の一群がこの変化を起こす
- knife /naɪf/ → knives /naɪvz/
- wife /waɪf/ → wives /waɪvz/
- life /laɪf/ → lives /laɪvz/
- leaf /liːf/ → leaves /liːvz/
- half /hɑːf/ → halves /hɑːvz/
- wolf /wʊlf/ → wolves /wʊlvz/
- calf /kɑːf/ → calves /kɑːvz/
- loaf /ləʊf/ → loaves /ləʊvz/
- thief /θiːf/ → thieves /θiːvz/
- shelf /ʃelf/ → shelves /ʃelvz/
- self /self/ → selves /selvz/
どの語も同じ手順を踏みます。まず語幹末の /f/ が /v/ に変わり、そのあとで複数形の一般ルールが働く——有声子音のあとの -s は /z/ になる、dogs が /z/ で cats が /s/ になるのと同じ理屈です。
なぜこの変化が起きるのか
/f/ と /v/ は調音の位置も方法もまったく同じ子音で、違いはただひとつ、声帯が振動するかどうかです。/f/ は振動せず、/v/ は振動します。英語にはこの手の「無声・有声のペア」が数多くあります。p/b、t/d、k/g、s/z も同じ関係です。かつて複数形の語尾自体が母音を伴っていた時代、語末の /f/ は前後を母音に挟まれる形になり、自動的に有声化して /v/ になっていました。声帯を振動させ続けるほうが、語の途中でいったん止めてまた動かし直すより省エネだったからです。その後、複数形の語尾は単なる -s に簡略化されましたが、すでに有声化していた /v/ はそのまま残りました。
-f で終わるすべての語が変わるわけではない
この変化が起きるのは、英語の古い層に属する基礎語彙に限られます。あとの時代に英語に入ってきた語は、そのまま -s を足すだけで /f/ を保ちます。
- roof /ruːf/ → roofs /ruːfs/(rooves ではない)
- chief /tʃiːf/ → chiefs /tʃiːfs/
- cliff /klɪf/ → cliffs /klɪfs/
- gulf /ɡʌlf/ → gulfs /ɡʌlfs/
- belief /bɪˈliːf/ → beliefs /bɪˈliːfs/
綴りだけを見てどちらのグループかを事前に判別する方法はなく、単語ごとに覚えるしかありません。ただ救いなのは、変化するグループがごく短く、しかも knife、wife、life、leaf、half、shelf、self、wolf、calf、loaf、thief のようにほぼ毎日使う基礎語ばかりだということです。この短いリストを覚えてしまえば、それ以外は素直に -s を足すだけで済みます。
練習のしかた
上の単数・複数のペアを読み比べてみてください。まず単数を読み、語末の /f/ で息がほとんど漏れるだけで振動がないことを確認します。次に複数を読み、/v/ のところで喉が振動するのを、喉に指を当てて確かめます。特に leaf/leaves、half/halves は注意してください。有声子音の前の母音は無声子音の前よりも明らかに長く伸びます。bag の母音が back より長いのと同じ理屈で、子音そのものより先に母音の長さが手がかりになることがよくあります。
ある複数形が /s/ で終わるのか /z/ で終わるのか、語幹まで変わるのか——迷ったときは PHONO でカメラを向けてみてください。英文を単語ごとに IPA で表示し、米英どちらの音声も聞き比べられます。
ダウンロード:https://apps.apple.com/us/app/phono-english-phonetics-ipa/id6783243417 · phono.douhouse.com