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can の母音は、n にたどり着く前からもう鼻に漏れ始めている

教材ではほとんど扱われない話ですが、「一つ一つの音は合っているのに、なんとなく硬く聞こえる」の一因はここにあります。英語では、母音のあとに /m/ /n/ /ŋ/ という鼻音が続くとき、その母音自体が終わる前から、すでに鼻へ息が漏れ始めているのです。

まず前提:英語に鼻母音そのものはありません

フランス語には bon や français のような本物の鼻母音があり、鼻音性が母音そのものに組み込まれていて、後ろの子音が省略されることさえあります。英語はそうではありません。英語の母音は音韻的には純粋な口腔母音で、/m/ /n/ /ŋ/ もそのあとしっかり最後まで発音されます。

ポイントはそのつなぎ目にあります。軟口蓋(口の奥、上あごの柔らかい部分)は、口腔母音のときは上がっていて、/m/ /n/ /ŋ/ を出すときは下がって鼻に息を通します。この切り替えは、母音と子音の境目でぴったり起こるわけではありません。軟口蓋はほんの少し早めに下がり始めるため、母音の最後のわずかな部分は、子音が始まる前からすでに半分鼻音化しています。

これは言語学で先行的鼻音化(anticipatory nasalization)と呼ばれ、母語話者はまったく意識せず自動的に行っています。

聞き比べてみると

簡単な確認方法:鼻をつまんで、ゆっくり "man" と言ってみてください。母音の部分ですでに、鼻の中の圧力がわずかに変わるのを感じるはずです——n にたどり着く前から鼻音が始まっている証拠です。次に "mad" で同じことをしても、母音の間は何も変わりません。後ろに鼻音が続かないからです。

この細部をあえて練習する価値

母音と子音をはっきり分かれたブロックとして扱う言語の話者は、完全な口腔母音を言い切ってから、重くしっかりした鼻子音に急に切り替えがちです。一つ一つの音は間違っていなくても、つなげると硬く、機械的に聞こえます。母語話者の発音にはそもそもこの硬い境界線がなく、軟口蓋が徐々にゆるみ、音同士が溶け合っているからです。

逆に鼻音化を早めすぎたり強めすぎたりすると、今度は /m/ /n/ /ŋ/ 自体がぼやけたり、消えてしまったりします。つまりこれは「鼻音化するかどうか」ではなく、タイミングと度合いの問題です。鼻音の色がつくのは母音のほんの最後の一部だけで、後ろの子音はそれでもきちんと発音される必要があります。

練習方法

鼻音が続くかどうかだけが違うペアを使ってください:bad–ban、cap–camp、hat–ham、add–and、bed–Ben。まず鼻音のない方を言って、素の口腔母音を感じます。次に鼻音のある方を言い、母音の最後のほんの一瞬だけやわらげて鼻の方へ少し息を流してから、唇や舌先をしっかり閉じて /m/ や /n/ を最後まで言い切ります。大げさにする必要はなく、その短い移行を止めずに起こすだけで十分です。

こうした微細な移行は、IPA の表記だけではほとんど示せませんが、存在を知っているだけで、「音は合っているのになぜか硬い」の理由に気づけるようになります。PHONO はカメラを向けるだけで、英文を単語ごとに IPA で表示し、米英どちらの本物の音声も聞けるので、その移行の感覚を耳で確かめられます。
ダウンロード:https://apps.apple.com/us/app/phono-english-phonetics-ipa/id6783243417 · phono.douhouse.com