「un- は弱く読む」は誤解——否定の接頭辞はシュワー化しない
「強勢のない音節は弱く読む」というルールを覚えたばかりの人がよくやる失敗があります。unhappy の un- を /ən/ とあいまいに読んでしまい、disagree の dis- まで軽く潰してしまうことです。どちらも実は間違いで、理由を知っておく価値があります。
否定の接頭辞は、強勢がなくても弱化しない
un- と non- は、強勢の有無に関係なく、母音がはっきりしたまま変わりません。
- unhappy /ʌnˈhæpi/ —— un- に強勢はないが、母音は /ʌ/ のまま。/ən/ にはならない
- unable /ʌnˈeɪbl/ —— 同じパターン
- nonsense /ˈnɒnsəns/ —— この語では non- 自体が主強勢を持つので、そもそも弱化の対象にならない
- non-stop /ˌnɒnˈstɒp/ —— non- は副次強勢を持ち、母音は完全な /ɒ/ のまま
理由はシンプルです。この音節は「否定」という語の核心的な意味を担っています。ここをあいまいにすると、happy と unhappy が話し言葉の中でほとんど区別できなくなってしまいます。英語の弱化は労力を省くための仕組みであって、意味を消すための仕組みではありません。
dis- も同じ扱い
- disagree /ˌdɪsəˈɡriː/ —— dis- は副次強勢を持ち、母音ははっきりしたまま
- dishonest /dɪsˈɒnɪst/ —— この語では dis- が唯一の強勢音節
- disability /ˌdɪsəˈbɪləti/ —— dis- ははっきりしたまま。弱化するのはその直後の a のほう
in- も弱化せず、代わりに形を変える
in- でおもしろいのは、弱化するかどうかではなく(しません)、後に続く子音によって形そのものが変わることです。これを同化と呼びます。
- p / b / m の前 → im- に:impossible /ɪmˈpɒsəbl/、imbalance /ɪmˈbæləns/、immature /ˌɪməˈtʃʊə/
- l の前 → il- に:illegal /ɪˈliːɡl/、illogical /ɪˈlɒdʒɪkl/
- r の前 → ir- に:irregular /ɪˈreɡjʊlə/、irrational /ɪˈræʃənl/
- それ以外 → in- のまま:inactive /ɪnˈæktɪv/、inability /ˌɪnəˈbɪləti/、indirect /ˌɪndɪˈrekt/
これは綴りの気まぐれな変化ではありません。先に発音が変わり、綴りがそれに合わせて変わったのです。しかも、この規則は「否定の意味かどうか」とは無関係です。inform /ɪnˈfɔːm/ や invent /ɪnˈvent/ の in- は語根の一部で「不」の意味はまったくありませんが、同じ同化規則が働きます。
練習:まず接頭辞を見分ける
un-/non-/dis- で始まる語を見たら、まずこれらの否定接頭辞かどうかを確認します。そうであれば、強勢の有無に関わらず母音をはっきり保ち、習慣であいまいにしないこと。in- で始まる語を見たら、次に続く音を確認します。p/b/m なら im-、l なら il-、r なら ir-、それ以外は in- のままです。
どの否定接頭辞が完全な母音を保ち、どれが im-/il-/ir- に変化するのか——PHONO はカメラを向けるだけで、英文を単語ごとに IPA(強勢つき)で表示し、米英どちらの音声も聞けます。
ダウンロード:https://apps.apple.com/us/app/phono-english-phonetics-ipa/id6783243417 · phono.douhouse.com