← 記事一覧

「-ough」は何通りに読む?tough・through・though がまったく違う音になる理由

英語の先生がよく学習者をからかうために持ち出す、こんな一文があります。

"Though the tough cough and hiccough plough me through, I ought to cross the lough."

声に出して読んでみると、奇妙なことに気づきます。ほとんどすべての単語に o-u-g-h という綴りが含まれているのに、韻を踏んでいる単語がひとつもないのです。これは早口言葉として作られたわけではなく、英語の綴りが抱える真実をそのまま見せつけている一文です。この四文字は、実際の発音についてほとんど何も教えてくれません。

ough はひとつの音ではなく、古い発音の"化石"

かつて ough の gh は、実際に喉の奥で出す子音を表していました。スコットランド英語の loch にある ch のような音です。時代とともにこの音はほとんどの英語アクセントから消えましたが、綴りだけは変わらず残りました。その結果、同じ四文字が、互いにまったく関係のない複数の音を担うことになったのです。だから「読み方を推測する」というやり方はここではほぼ通用しません。音ごとにグループ分けして、それぞれの代表語を覚えるしかないのです。

六つのグループと、それぞれの代表語

1. /ʌf/ — tough /tʌf/、rough /rʌf/、enough /ɪˈnʌf/

いちばん頻度の高いグループ。どれも「大変さ」に関わる意味で、tough を基準にすれば覚えやすいです。

2. /ɒf/(英)/ɑːf/(米)— cough /kɒf/、trough /trɒf/

cough(咳)は実際によく使う単語なので、これを基準に。

3. /uː/ — through /θruː/

ough が長母音 /uː/ になる、数少ない常用語。tough や though と綴りはよく似ていますが、音はどちらとも重なりません。

4. /əʊ/(英)/oʊ/(米)— though /ðəʊ/、although /ɔːlˈðəʊ/、dough /dəʊ/

though と through はもっとも混同されやすいペアです。語尾の四文字は同じ、頭の一文字だけ違うのに、母音はまったく別物です。

5. /ɔːt/ — thought /θɔːt/、bought /bɔːt/、brought /brɔːt/、ought /ɔːt/

このグループはすべて -ght で終わり、「考えた」「買った」「持ってきた」「〜すべき」といった意味でまとまっています。ought という語自体が、このパターンの名前のようなものです。

6. /aʊ/ — bough /baʊ/、plough /plaʊ/、drought /draʊt/

頻度は低めですが、drought(干ばつ)はニュースでよく見かける単語です。

「読み方を推測する」がむしろ損なワケ

英語の単語の多くは、綴りから発音を推測してもそこそこ当たります。ところが ough はその常識をわざと裏切る綴りで、六つの読み方がほぼ均等に分かれているため、最初の予想は五分五分程度の精度しかありません。存在しない規則を探すより、tough・cough・through・though・thought・bough という六つの代表語を先に完全に身につけ、新しい単語に出会ったら「この単語はどの代表語と韻を踏むか」で判断するほうが確実です。

このシステムでも拾いきれない例外もあります。borough(自治区)は ough の部分がほとんど聞こえないほど弱い /ə/ になり、/ˈbʌrə/ と読みます。こうした単語は出会うたびに個別に覚えれば十分で、無理に六グループのどれかに当てはめる必要はありません。

練習法

さきほどの一文を声に出し、一語ずつ丁寧に読んでみてください。規則を探そうとしないことが大切です——ここには本当に規則がなく、あるのは分類された記憶だけだからです。tough・through・though・thought・bough・cough の六語がすらすら出てきて、互いに混ざらなくなれば、ough の中でもっとも頻度の高い部分はマスターできています。

-ough で終わる単語の読み方に迷ったら?PHONO はカメラを向けるだけで、英文を単語ごとに IPA で表示し、どのグループの発音かひと目でわかります。米英どちらの音声も聞けます。
ダウンロード:https://apps.apple.com/us/app/phono-english-phonetics-ipa/id6783243417 · phono.douhouse.com