英語でいちばん多い母音は、あいまいな「ア」——/ə/(シュワー)の話
発音練習はたいてい「はっきり読む」方向に向かいます。すべての音節をしっかり、母音もていねいに。ところが出来上がるのは、通じるけれどなぜか英語らしく聞こえない発音です。
原因は多くの場合、どれかの音を間違えていることではありません。弱く読むべき音を、弱く読んでいないことです。
いちばん使う母音を、たいてい習っていない
それがシュワー、発音記号では /ə/。あごの力を抜き、口を少し開け、舌を自然な位置に置いたまま、短くあいまいに「ア」。それだけです。英語の中で出現頻度がもっとも高い母音で、/i/ や /e/ や /æ/ よりも多く現れます。
あいまいなのは手抜きではなく仕様です。この音は強勢のない音節にしか現れないからです。英語は強勢でリズムを作る言語で、強く読む音節は長くはっきりと、それ以外は短くぼやけて場所を譲ります。
同じ文字でも、強勢があれば明瞭、なければ /ə/
- about /əˈbaʊt/ — 最初の a は「ア」とはっきり言わない
- banana /bəˈnɑːnə/ — a が三つ、はっきり読むのは真ん中だけ
- computer /kəmˈpjuːtə/ — 最初の o は「オ」ではない
- problem /ˈprɒbləm/ — 後ろの e は「エ」ではない
- support /səˈpɔːt/ — 最初の u も弱いまま
つまり、綴りではなく位置が母音を決めているわけです。書かれている文字は、そこで何を言うかをほとんど教えてくれません。
機能語は文の中でつぶれる
単独なら to は /tuː/、of は /ɒv/、can は /kæn/。でも文に入れると、ほぼ必ず弱まります。
- I want to go → /tə/
- a cup of tea → /əv/
- I can swim → /kən/
「単語は全部知っているのに、つながると聞き取れない」の正体はこれです。相手が飲み込んでいるのではなく、文の中での本来の言い方をしているだけ。こちらが、はじめから来ない明瞭版を待っているのです。
練習は逆向きに
シュワーを正確に出す練習にはあまり意味がありません。もともと「いちばん力を抜いた音」だからです。必要なのは、強勢のない部分を短くあいまいに言ってよいと自分に許すことです。
banana で試してみてください。まず三音節を均等にはっきり。次に、真ん中だけ十分に、前後は半分の長さで。二回目はサボっている感じがするはずです。そのサボっている方が正解です。
どの音節に強勢が来るのか、どこが /ə/ につぶれるのか——PHONO はカメラを向けるだけで、英文を単語ごとに IPA(強勢つき)で表示し、米英どちらの音声も聞けます。
ダウンロード:https://apps.apple.com/us/app/phono-english-phonetics-ipa/id6783243417 · phono.douhouse.com