their も there も they're も、発音はまったく同じ——耳で聞き分けようとしていた"違い"は存在しない
発音練習をある程度続けていると、無意識にこう思い込むようになります。「綴りが違うんだから、発音にも何か違いがあるはず。じゃないとネイティブはどうやって聞き分けているんだろう」と。だから their、there、they're のような単語が出てくると、つい発音のほうで何か違いを作ろうとしてしまいます。
でもその前提が、そもそも間違っています。
これらは「似ている」のではなく「完全に同じ」
英語には、綴りも品詞も意味もまったく違うのに、発音だけは音素レベルで完全に一致する単語のグループがあります。
- to /tuː/、too /tuː/、two /tuː/ —— 3語で1つの音
- their /ðeər/、there /ðeər/、they're /ðeər/ —— 所有格、場所を表す副詞、"they are" の短縮形。文法上の役割はまったく別なのに、発音は同一
- whose /huːz/、who's /huːz/ —— 「誰の」と "who is/has" の短縮形、同音
- its /ɪts/、it's /ɪts/ —— 所有格と "it is" の短縮形、同音
- your /jɔːr/、you're /jʊr/(あるいは /jɔːr/)—— 辞書上は厳密には別音だが、自然な会話のスピードではほぼ完全に重なり、ネイティブもわざわざ区別して発音しない
こうして並べてみると、違いは紙の上にしか存在しないことが分かります。これらの多くは「文法上の双子」——もともと1つの発音だったものを、綴りの側だけが前置詞・副詞・所有格・短縮動詞という別々の役割のために書き分けている、というだけです。発音のしくみは、その文法上の役割分担にはまったく関与していません。
聞き分ける手がかりは、耳の中にはない
ネイティブが文中で there と their のどちらを聞いているか判断するとき、頼っているのは文の構造と意味であって、音の中に隠された何かのヒントではありません——そもそも隠されたヒントなど存在しないからです。同じ発音が1文の中に3回連続で登場することもあります。
Their car is parked over there because they're busy.
3つの単語、すべて /ðeər/。聞き手は「car の後にどんな品詞が来るはずか」「busy の前には何が来るはずか」という文脈で判断していて、母音のどこかに耳を澄ませているわけではありません。
これが意味すること
their を there より少し重く読んで聞き手に伝わりやすくしよう、と密かに工夫していたとしたら、それはネイティブ自身がやっていないことをやっているということです。存在しない違いを無理に作ろうとすると、話し方が硬くなり、まるで綴りを音読しているように聞こえてしまいます。
本来練習すべき方向は逆です。これらの単語は完全に同じ音で読んでしまって構いません。その代わり、文の中で本当に意味を運んでいる語——ここでは car や busy——にこそ強勢を置く。文法的な役割は文脈に任せればいいのです。「単語は全部聞き取れたのに、文の意味がつかめない」がよく起きるのも同じ理由です。存在しない発音の違いを待ち続けて、本当に情報を運んでいる文強勢のほうを聞き逃しているのかもしれません。
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