← 記事一覧

cat が「キャ」に聞こえる理由——語末の破裂音は「消えている」のではなく「開放していない」

発音記号は読めます。/k/ /æ/ /t/、どれも単体では言えます。それなのに口に出すと cat は「キャ」、stop は「スト」、good は「グー」に近く聞こえてしまう。最後の子音を落としていると思い込んで、意識的に強く /t/ /p/ /d/ を発音してみると、今度は単語の後ろに余計な一拍がついたように聞こえる。

実際の仕組みはこうです。英語の語末の破裂音は、もともと音として放出されないことが多い。放出されないことと、動作自体がないことは別物です。

破裂音がどう成り立っているか

/p/ /t/ /k/ /b/ /d/ /ɡ/ はどれも二段階でできています。まず気流を完全にせき止める(閉鎖)、次にそれを解放する(開放)。耳に聞こえる「音」は、この開放の瞬間に出る小さな破裂です。語頭ではこの開放がはっきり聞こえることがほとんどです。

ところが語末では——特にポーズの前や、次に別の子音が来るとき——ネイティブは閉鎖だけで止めてしまうことがよくあります。唇や舌はきちんとその位置に動き、気流も実際にせき止められているのに、開放の音だけが出ません。これを「無開放(unreleased)の破裂音」と呼びます。

日本語にはこの語末の形がそもそもない

日本語は「ん」を除いて、ほぼすべての子音の後に母音が続くモーラ言語です。語末に /p t k b d ɡ/ が単独で来る形自体が存在しません。そのため、この語末の破裂音に出会ったとき、多くの学習者がやってしまうのは「閉鎖はするが開放しない」ではなく、動作そのものを丸ごと省略することです。唇は触れず、舌先は歯茎に届かない。自分の耳には同じに聞こえても、相手の耳にはまったく違って届きます。

聞き手が頼りにしているのは破裂音そのものではない

ネイティブの耳は、破裂の音を聞かなくても語末に子音があることを認識します。手がかりは直前の母音の終わり方にあります。cat の /æ/ は、/t/ のために舌が閉じる動作によって急に断ち切られます。一方、子音の動作そのものを省略してしまうと、ca のように母音が自然にフェードアウトして終わります。この「断ち切られるか、自然に消えるか」の違いを、ネイティブの耳は無意識のうちに聞き分けています。

文の中ではさらに開放されなくなる

big catstop go のような組み合わせでは、前の単語の語末子音の直後に別の子音が続きます。ネイティブはこの破裂をほぼ開放せず、閉鎖の形のまま次の子音の位置へ滑り込みます。音のない一瞬がそこにあるだけです。ここで動作自体を省略してしまうと、二つの単語がくっついて、まるで片方が消えたように聞こえてしまいます。

練習法:まず動作をやってから、開放するかどうかを選ぶ

cat でゆっくり練習してみましょう。/k/、/æ/、そして舌先を歯茎に当てて /t/ の閉鎖を作り、いったんはっきり開放して音を出します。それに慣れたら、同じ動作を閉鎖の位置で止めたまま終わらせてみてください。単語は短く、きっぱりと聞こえるはずです。その短く切れる感覚が、語末の本来の形です。

語末の破裂音を開放できているか、それとも動作ごと省略してしまっているか——PHONO はカメラを向けるだけで、英文を単語ごとに IPA で表示し、米英どちらの音声も聞けます。
ダウンロード:https://apps.apple.com/us/app/phono-english-phonetics-ipa/id6783243417 · phono.douhouse.com